えい君の初回診療、そしてご立腹!~後編~

介護の現実

 ごきげんよう!きいです。

 えい君の「車の運転のために薬を止める」という発言に対して、唸ってしまったY先生。

思い通りにいかないことにイライラし始めるえい君。さて、今回は「温厚」だと思っていたえい君がご立腹した話の後編です。

唸ってしまったY先生

 えい君の「車の運転のために薬を止める」という発言に対して、さすがのY先生も、唸ってしまいました。

唸って、絞り出すように「〝えい君〟さん…。今のお身体の具合から考えて、この薬を止めるのは、あまり賢明とはいえません…。」

「じゃあ、買い物にも行けなくなるじゃないですか」

『だからTさんが、ヘルパーさんお願いしようって言っていたんだけど!』と心の中で叫ぶ私。

「う~ん…。〝えい君〟さんは、お独りですしね…。例えば妹さんに乗せてもらうとかはどうですか?」

「妹も忙しいんです」

『そこは否定しませんが…。でも、薬を止められるのは困るんですよ』

「う~ん…。では〝えい君〟さん…。今日の所はまだ退院されたばかりだし、とりあえず来週にまた来させてください。その時の体調も見て、再開された生活の状況も見て考えましょう」

兄はすぐにOKをもらえなかった(当たり前だ!)ことが不服な様子。

先生が退室するまでの間、腕組み+足組み+先生に背を向けるように座って貧乏ゆすりという非常にわかりやすい不満の表出を続けたのでした。

さらに追い打ち

 Y先生は退室される前に、どうしても必要な事である「契約」をえい君と交わして行かれました。

 それに引き続きのんさんによる契約の説明。

重要事項説明書と契約書の内容が説明され、それぞれの書類に署名・捺印が必要です。

署名には住所も書かないといけないので、大変な作業です。

兄に代わって、私が署名を代筆、捺印を兄に了承を得て行いました。

訪問看護の契約もさすがに兄の疲労を考え、あとでゆっくり目を通しつつ私がかいつまんで説明を加え、私が署名を代筆するという方法としました。

 この時点で、兄は既に疲労困憊…。訪問診療で思い通りにいかないことにイライラしたこともあってか、「契約」に対してご立腹!

「なんで説明と契約が一緒なの⁉」

この発言に対しては、私もさすがにハッとしました。

兄は元々、半導体を扱う企業の営業職でした。

「契約」を得るために、いわゆる接待の数々をこなしてきました。

相手企業の方をおもてなししての、会食やゴルフ…。気を遣い、頭を下げ…。

そんな仕事を何十年と続けてきた兄です。

 ところが、ここで繰り広げられる医療や介護の「契約」は、「先ず契約ありき」なのです。

十分な説明の上金額を提示し、さらに金額の交渉を重ね、納得がいったら初めて契約となる…。

そのような契約ではなく、「あなたはサービスを利用する必要がありますから、そのためには契約が必要です」というもの。

 兄が営業職として相手企業から契約を頂くために、様々な苦労をして来たものとはかけ離れたものだと思気が付いて、ハッとしたのです。

 のんさんは「申し訳ありません。医療や介護は、先ず契約ありきなんです」といって、悪いわけでもないのに謝罪をして下さいました。

 ここだけは、私も兄に対して「だって必要なんだからしょうがないじゃない」とはとても言えませんでした。

 

 なぜ、医療と介護においては、契約ありきなのでしょう?

早くサービスを導入できないと困る人が出てくるから?

競争が生じるのは公平性に影響が出るから?

私は今まで、一度も考えたことがありませんでした。

それが当たり前だと思ってしまっていました。

だけど本当は、そうじゃないかもしれない。

そうではいけないのかも知れない…。

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