帰って来ちゃった

在宅介護

 病院へ救急搬送された後。

 検査の結果、重度の肺炎との診断で入院の指示となったBさん。連絡を受けた高齢のお父様が駆け付けて下さったので、ケアマネさんもお父様へ引継ぎ、職場へ戻られたのだそうです。

 そして朝になり、その後の状況を確認しようとお父様へ連絡をして…。
ケアマネさんは、Bさんが入院を拒否して帰宅したことを知るのです。

入院拒否

 Bさんは「入院なんかできるか!俺は帰る!」と点滴を自分で引っこ抜いて暴れたのだそうです。

 脳梗塞の後遺症もあるBさん。息は苦しいわ。救急搬送されちゃうわ。点滴もされちゃうわ…。

それでパニックを起こしたのでしょうか…?

 医師は「このまま治療をしないで帰ったら命に関わる」と止め、お父様も一緒になって止めたそうですが、その医師とお父様に怒鳴り散らし、点滴も暴れて入れさせなかったそうで。

 結局〝何があっても病院を訴えることはございません〟という書類にお父様がサインをして帰宅したのだそうです。


 そして私は…。帰宅後も、まだゼイゼイして苦しそうなBさんの元へ訪問することに。
イライラして多弁なBさん。
 病院から医師が止めるのを聞かずに帰宅したことを武勇伝のように語ります。
「医者にあんなことを言ってやった。こんなことも言ってやった」と…。

あ~あ。

 搬送された総合病院からは、利尿剤などが処方されていました。
ですが、自宅にある内服薬全部を確認したところ、前医から処方された内服薬にも利尿剤が含まれていました。

 私は入院を拒否した病院へ連絡し、利尿剤が重複していることを報告しようとしました。

医師が処方した薬を勝手に中止することはできません。

 外来に電話が繋がり、看護師さんが対応して下さいました。
「昨日Bさんに処方された内服薬について、診て下さった先生に確認したいことがありお電話しました」
 そう伝えると、その看護師さんは先生に声を掛けて下さったのですが…。
 受話器をを塞ぐこともなく、待機状態にもされなかったため、会話が丸聞こえになりました。
先生の「え?Bさん?あの人、まだご存命なの?」という声がハッキリと聞こえました。

まだご存命なの?


 そして先生が電話に出られ…。

「利尿剤は抜いてください。それでね、Bさんなんだけど。悪いけど今後うちの病院では診ませんから、何かあってもうちには運ばないで下さいね。お父さんにもご本人にも言ってありますから。頼みますよ。」
…そう言って電話は切れました。

 結局「入院しないで済むように、近くの内科で診てもらいましょう」という提案を受け入れてくれたBさん。
 またまたケアマネさんと一緒に介護タクシーで病院へ向かいました。
その結果「腎性肺水腫」の診断で(自由気ままな食生活の影響で腎機能が悪化、肺に水が溜まって呼吸障害を起こしたと言う事だったようです)その日のうちに透析が行われました。
 後にBさんから聞いた話では「透析しないと死ぬよ」と医師が言ったのだそうです。
総合病院の先生も同じような事を言ったと思うんだけどなぁ?
楽になったBさんは「ここなら入院してもいい」といって、1週間の入院後無事に退院されたのでした。

 それからは救急搬送する事態にはならず経過したBさん。
訪問サービスに対してもクレームの連発。ヘルパーさんを何度も替え、宅配弁当の業者さんも何度も替え、介護タクシーの業者も替え、トラブルの絶えない方でした。
 それでも訪問看護とは長くお付き合いができていたのですが…。

 自宅にあったボールペンが1本行方不明になったのが、訪問看護師が黙って持って行ったと言って…。
 ある日突然、ご利用は終了となりました。

「もう二度と来るな」

 そういう事でした。


 訪問終了が決まってからはスタッフをなだめ、ケアマネさん・障害支援のケースワーカーさん・後見人さんとも連携をし、看護サマリーを記載して今までのBさんの経緯、抱えているリスク、今後の課題を書き出して…。

 私の仕事は終わりました。

 世の中には、そんなBさんのような方が生活されています。

 Bさんが治療を拒否して帰宅したのには、苦しかったことと障がいにより状況が理解できなかったことが影響しているのかな。

 ちょっとお気の毒な気もしますが…。

 その後Bさん、どうしているかしら?

 気になります。

 

タイトルとURLをコピーしました