ごきげんよう!きいです。
それは、がん末期で余命幾ばくもないC様のお宅を訪問中のこと。
C様は血圧も低下。経口摂取も困難となっています。
意識も朦朧としていますが、その表情は穏やかです。
食べ物も飲み物も、口からは摂れなくなりましたが、ご家族は点滴を望まず。
そのおかげか、痰がゼロゼロとすることもなく、呼吸も穏やかです。
そのC様のご家族から、質問がありました。
「先生が出して下さった浣腸液。これは家族が自分で使っても良いんですか?」
処方で頂く浣腸液は、医療者が処置を行う前提の作りになっており、ノズル部分が長く、ストッパーという「挿入しすぎ」を防ぐための部品が付いているものもあります。
メーカーさんは違っても、内容量が違っても、大抵は同じような形をしています。
人間の腸の粘膜は柔らかく傷つきやすいので、この浣腸液のノズルを深く挿入したり、ストッパーが外れて腸の中に残ってしまうと大変なことになります。浣腸液を注入する時の姿勢にも注意が必要です。
腸に穴が開いてしまうという事故も有り得るのです。処方される浣腸液は、「医療者が実施するための物」と思って頂きたいのです。
一般の方が使用されるのであれば、市販の「イチジク浣腸」が、ノズルが短くて安全です。
C様のご家族は「じゃあ、返品はできますか?」
それが…「保険を使った処方」なので、一度受け取ってしまった物は未使用であっても返品はできません(受け取る前の〝処方取り消し〟ならできるようですが…)。
不要になった浣腸液は、大抵は「どこかに譲られるか、破棄されるか」となるようです。
この浣腸液の、長いノズルとストッパー。
「要らなくない?」と思っちゃいました。
そうすれば誰でも安全に使えるのに…。
最近、破棄される浣腸液や「お腹に合わなかった、お口に合わなかった〝栄養剤〟」の多さが気になります。
段ボール箱に入ったまま、玄関先に放置されている栄養剤。
これも「処方」です。