認知症と診断された時のこと② ~認知症専門医を受診~

母の介護

診察はどんな風だったか

 私達は「よし、今だ!」とばかりに、まりぃさんを認知症専門医の元に連れて行き、診察を受けました。

 実は訪問看護ステーションやヘルパー事業所は必ず研修等で勉強しなくてはいけない項目がいくつかあり、その中に「認知症」があるのです。私も認知症の勉強会に参加しており、そこで講師を務めて下さった先生のクリニックを受診させていただきました。

 勉強会の中で「認知症は薬剤治療も必要だけど、日常の生活支援の方が大事だと思う」と語っていた先生でした。

 その先生は病院の看板を「〇〇内科医院」と掲げていました。

 こじんまりした病院でした。待合室には患者さん本人と付き添いのご家族という組み合わせが何組か、それぞれ自分たちが呼ばれるのを待っていました。TVの音と人の話し声がざわめきとなって聞こえていましたが、病院によくある〝アナウンス〟(〇〇さーん、△番のお部屋へお入り下さーいっていうやつです)はありませんでした。

 まりぃさんの名前が看護師さんから呼ばれ、私達は診察室に入りました。

 診察室では、先生が待っていてまりぃさんが歩く様子、座る様子、先生の挨拶に対する返答などをじっと見ていました。まりぃさんに対する簡単な問診や血圧測定や胸部聴診の後、再度待合室に移動し待機。次は家族だけが呼ばれました。

 まりぃさんが一人になってしまうタイミングでは、看護師さんが傍について見守りをしてくれます。これはありがたい。さすが認知症専門医です。

 さっきまりぃさんと一緒に入った診察室で、今度はえい君ときいが、先生と面談です。

 先生からは、まりぃさんの身体と生活の状況を聞かれました。今までにかかった病気は?特に脳血管疾患は?なぜ認知症かと思ったのか?それはいつから気になったのか?今はどんな生活をしているか?

 脳血管疾患の既往は無いこと。だけど転ぶことがあり、頭をぶつけているかもしれないこと。前述の、私が「まりぃさんが認知症に違いない!」と思ったときのエピソードなどを伝えると、先生はうんうんと頷きながら話を聞いて下さいました。

 そして、「検査をしてみましょう。問診の検査と画像診断と採血をします」とオーダーを出して下さった。

 待合室でまりぃさんと合流し、見守りしていてくださった看護師さんにお礼を述べて。

 最初の検査は〝長谷川式簡易知能評価スケール〟。どこかで聞いたことがありませんか?100から7を順番に引いていくテストがあるって。

 もちろんそれだけではなく「今日は何年、何月、何日ですか?」という質問や「三つの言葉を繰り返す、覚える」「目の前の品物を5つ覚える」「知っている野菜の名前をできるだけ思い出して言う」などに答えていく認知症の検査です。まりぃさんが担当者と向かい合って検査を受けるのを後方の椅子に座って見守るえい君ときい。

 まりぃさんは真剣に答えていきます。

「ああ、こんなことも分からないのか・・・」と思った設問と「できるじゃん!」と思った設問が混在していました。

 採血は特に問題なく終了。その後MRI撮影。これはまりぃさんの膝が悪いため、撮影台に乗るのに少々手間取りました。脱いだ靴の置き場所が気になるのか、緊張しているのか、やたら足元を気にして「ここで良いの?」と何度も確認していたのを思い出します。

 しばらくして、診察室に三人が呼ばれました。

「アルツハイマー型認知症です。」

先生は私達に向かって言いました。

「アルツハイマー型認知症です」

 ああ、やっぱり…。

 古い小さな脳梗塞はいくつかあるものの問題になるようなものではなく、慢性硬膜外血種など転んだことによる後遺症はありませんでした。

 そして先生はまりぃさんに向かって「お薬を出しますね。最初は少ない量で飲んで下さい。問題が無ければ今後少し増やします。合わないようならご相談下さい」とおっしゃいました。

「はい」とだけ、まりぃさんは言いました。

 えい君ときいに対しては、「薬は認知症を治すものではない。進行をできるだけゆっくりにするためのものである。今後は介護支援が必要になるから介護認定を受けケアマネジャーについてもらいなさい。必要な書類は書きますから」とアドバイスを頂きました。

 帰りの車の中では「やっぱりそうだった…」と思う悲しみと、「診断がついて薬を処方してもらった!」という安心感とが混ざった複雑な心境でした。

「とにかく先生に診てもらって良かった、良かった!」とやたら繰り返して、自分に言い聞かせていたような気がします。

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