ごきげんよう!きいです。
以前、まりぃさんに閉め出されたことを振り返ってみた際に、ベビーゲートと自転車の鍵についても触れました。そう。あれはまりぃさんが一人歩きをしないために玄関に取り付けた物です。もちろん、最初からあの対策だった訳ではありません。いろいろ考えて、いろいろ試した結果、今の〝ベビーゲートと自転車の鍵〟というスタイルに落ち着いたのです。 徘徊シリーズの第4弾は、それまでの経緯についての話です。
まりぃさんの家
最近は徘徊(どこともなくぶらぶらと歩きまわる事)とは言わず、ちゃんと目的があるのに迷ってしまうのだからと「一人歩き」という呼び方をされるようになりつつあります。
まりぃさんの目的。最初は散歩に出ようとしたり、なんとなく出掛けたくなっていたようですが、今では見当識障害も重なり、「自分の家に帰る事」に変わりました。そしてまだ小さかった頃の兄弟や自分の子供(みんな、もうとっくにいい年になっているのに!)にご飯を食べさせることも目的になってしまったのです。
まりぃさんが生まれた家は、今もまだ存在しています。
ですが、まりぃさんの頭の中にある家と家族は、どこにも実在しません。
まりぃさんがどんなに行きたいと望んでも、たどり着くことはできないのです。
まりぃさんが家を出てどんなに歩いても、どんな乗り物に乗っても。いくらお金をかけても。
だから止めるしかありません。
では、どうやって止めるか?
これが大問題なのです。
同居し始めた頃は、まりぃさんは出かけたら帰って来られなくなっていましたが、「家に帰る」「家族にご飯を食べさせる」という目的での外出はありませんでした。
そのため一人歩きを阻むための手段を講じる必要はなく、防犯のために普通の家庭と同じように、戸締りをしていれば良かったのです。
それが変わってしまったのは、見当識障害が強くなってからでした。
それでも最初は「一人で外に出ると、迷子になるよ!」と書いたメモをドアの目立つところに貼っておけば良かったのです。
外から鍵をかけても、まりぃさんは中から普通に鍵を開けることができます。
だから日中はデイサービスに通って安全を確保。帰宅時間もできるだけ遅い時間にとお願いしました。
夜は靴をしまい込み、下駄箱には開けると鈴が鳴るように工夫をしました。
下駄箱に鍵を付けるなどすると、ガチャガチャ・ガタガタと大きな音を立てて子供を起こすと思ったからです。
まりぃさんのベッドサイドで私が眠ることも考えました。でもそれでは、まりぃさんの夜のトイレを阻むことになります。足を引っかけるなどして、転んでしまうかもしれません。
そしてレンタルした「ワイヤレス人感センサー」。これは私がスイッチをOFFにしたまま二度寝をしてしまい、まりぃさんが一人歩きをしてしまった例のヤツです。
私が使い方を誤らなければきちんとアラームが鳴って、まりぃさんを玄関で引き留めることができました。
家のあちこちには「もうすぐ帰るからお留守番していてね」「一人で家を出ないでね」「仕事が〇時に終わったら帰ります」「買い物に行ってきます。すぐ戻ります」というメモが貼られたりテーブルの上に置かれたりしました。
暫くの間はそれで落ち着いていたのです。
ワイヤレス人感センサーを返却することもできました。
大きなトラブルもなく、まりぃさんも穏やか。定期受診での認知症検査でも、少しだけ点数が上がって、先生から「良かったですね」と言われた時期でした。
そんな時間もあったのです。
そんな時は長く続かず…。
まりぃさんの帰宅願望が高まったのは、二年前くらいでしょうか。
デイサービスからの帰宅後に、玄関の外で隣の奥様と立ち話をしていたり、エレベーターで1階まで降り、ゴミステーション前でじっと立ってマンションを見上げていたり…ということがみられ始めたのです。
ゴミステーション前で立っていたときは、まりぃさんが車道に近かったことを危険と思って声を掛けて下さったマンションの住人の方がいました。その方がまりぃさんの認知症に気付き、手にしているデイサービスのバックに入っている「連絡帳」を見て、デイサービスへ電話をかけて下さったのです。
デイサービスから勤務中の私へ連絡が入り、私がまりぃさんを引き受けに戻りました。
急いで駆け付け、その方にお礼を言いましたが、その方から「何か連絡先が分からないかと思って、荷物を開けてしまってすみませんでした。」と謝られてしまいました。
「とんでもない!本当に助かりました。ありがとうございました!」そうお礼を言いました。
だけど、親切な方を謝らせちゃった…。こちらこそごめんなさい…。
本当にそう思いました。
その後、デイサービスの方からは「まりぃさんが出られないような、何か手段を講じてほしい」と言われました。まりぃさんの安全を守るためでした…。