病院へ

介護の現実

 ごきげんよう。きいです。

 兄は救急車で病院へ向かいました。私は窓が開いていないか確認をしたり、湯沸かしポットや炊飯器のコンセントを抜いたり、思いつくままに動いていました。そして兄の履物をもって、部屋の鍵を閉めて病院へ向かいました。

緩和病棟

 病院に着くと、守衛さんに入院した病棟と病室を確認して頂き、そのまま速足で向かいました。

 部屋は個室でした。

 兄は既にベッドに横になっていました。

 看護師さんが入院の手続きに必要な書類を持ってきてくださったり、クラークさんへ保険証を提出したりとバタバタ。サインをする書類の枚数もかなりのものです。

 書類の記入を進めながら、「食事は普通食で良いですか?」「病衣はレンタルにしますか?」などの質問にも答えるので、気が急いている割にはなかなか進みません。

 緩和病棟なので、このコロナ禍でありながら面会者として登録しておけば、少ない人数なら「一人ずつ短時間の面会」が許されていました。登録できるのは血縁者のみです。

 間もなく緩和科のM先生が来てくださいました。

「妹さんですね。お兄さんの病状について説明させて頂きたいのですが、こちらの部屋へ…よろしいですか?」とカンファレンスルームへ移動しました。看護師さんも一緒に話を聞いてくれています。

 自己紹介の後、先生が最初に言って下さったのは「今まで大変でしたね。お疲れさまでした」という一言でした。

ここで初めて「ああ、今まで大変だったなぁ」と急に実感が湧いてきました。

今まで、いや、今も?無我夢中でした。

少し涙が出ました。

そして先生から今までの状況、特に内服について等いくつか質問がありました。

また、点滴等を希望するか否かの確認もありました。

私は兄の心臓への影響も考え、希望しませんでした。点滴をしたからといって、延命を図れるものではないと思いました。

そして、幾つかの質問と少しの話の後、先生は言いました。

「余命は数日です。面会者として登録された方は短時間ですが会って頂けますから、必要なら連絡をしてあげてください」とのことでした。

兄の状況から考えれば納得がいきます。

「余命数日」

その残された数日という時間が、兄にとって不安の無い穏やかな時間であれば良いと思いました。

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