ごきげんよう。きいです。
前回<Aさんのその後>で「私は個人的に、Aさんが搬送を断られ続けた理由に〝高齢者で独居である〟〝血縁者が身近にいない〟〝入院にならなかった場合、一人で帰宅することができない〟という事実は大きな影響を与えていたと思います。」とお伝えしました。
今回はそこを深読みしてみたいと思います。
お帰り下さい
病院から敬遠される人。
それはまさに、Aさんのような状況の方だと思います。
もちろん、本人に責任がある訳ではなく、Aさんの置かれた状況の問題。
本当は「敬遠」のレベルではなく、「拒否」をされるケースもありますが…。
例えば「黒いリストに名前を残した人」とか。
その話はまたにして、今はAさんのような方がなぜ敬遠されるのかについて考えてみます。
訪問看護師は、救急車を要請する以前に利用者様の病状を病院へ報告し、緊急で診療を受けることが可能かどうかを確認することがあります。
私も何度も経験しました。
そしてその時に必ず聞かれるのが「利用者様の氏名、生年月日または診察券番号」です。それをもとに電子カルテの情報を確認するのでしょう。
そして「現在の状況・病状」。その時点で、電話を受けて下さっている方の頭の中では「何を確認して、誰に連絡をして、どこで処置をして…」という様なことが展開している筈です。
その次に確認されるのが、「いらっしゃる場合、どなたかの付き添いはありますか?」「診察や検査はできますが、入院にならなかった場合に、帰宅はできますか?」ということです。Aさんのように〝高齢者で独居である〟〝血縁者が身近にいない〟という方の場合、近所に住む友人が駆け付けたり、とても親身なケアマネジャーが駆けつけると言う事が望まれます。
そして救急車を呼ばなくても自家用車などで受診と帰宅を支援してくれる、ということがあれば良いのですが…。
それはめったに無いことです…。
実は私も、救急外来の方から何度か「あなたが付いてくることはできないんですか?」と聞かれたことがあります。
ゴメンナサイ。訪問看護師は受診の同行はできないんです。それはルールなんです。
病院側も必死です。
病院側の「一人で診察や検査をまわれなければ支援しないといけない。救急外来も少ない人数で激務をこなしているのに。
診療や治療に専念したいのに。
検査の同行や見守りや家族への連絡・状況説明・意思確認までやらないといけないのは大変な事です。
また、万が一の時に延命治療を望むのか?等の意思確認ができない患者や判断力が低下している・してしまうかも知れない患者が、たった一人で運ばれてくるのは大変困る」という心情も、とてもよく分かります。
また病院側には「診ることはできるけれど、入院の必要がない人を〝帰れない〟という理由で泊めることはできない」という事情もあるのです。
具合が悪くて救急車でやってくる人を、「診察が終わりましたからお帰り下さい」と放り出すことや、そのまま放置することができないのですね。
「泊めろ」「お帰り下さい」のすったもんだにも時間をかけることもできない。
それならば「できれば来ないで頂きたい」もしくは「責任をもって帰宅させてくれる誰か(家族でも近隣住民でも友人でも恋人でも)が同行して下さい」というのも分かります。
では、どうやって帰宅するのか?
これがまた難しい問題なんです。
救急車は病院まで搬送はしてくれますが、家まで送ってはくれません。
タクシーではないのです。
診療や治療を受けて、一般のタクシーで帰宅できるのなら良いのですが。
介護タクシーは昼間ならまだしも、夜間は手配が困難です。
だから「同居家族が同行できる」「自家用車もしくは福祉車両を利用する」というケースの方が受け入れは良いです。
病院が「受け入れ困難だ」という理由にはもちろん、R病院のように「医師が手術中で診察ができない」や「病棟のベッドが満床」という状況もあります。
手術中ではなくても、特に夜間の場合には「当直医が違う診療科の医師」と言う事もあります。昼間の場合には担当医が学会で不在」。病院の救急外来が「他の急患の処置で手一杯」ということもあります。
そんなふうに、どうにもならない状況があるのは事実なのです。
夜は避けましょう
だから…。
夜に救急車で受診しなくて済むように心がけることが、とっても大事。
Aさんの転倒はお昼の出来事でしたが、それでもタイミング悪く搬送に手間取りました。
これが夜の出来事だったとしたら、もっと大変だったかもしれません。
病院の受け入れがどうこうという前に、誰かが来るまで発見してもらえないのですし。
そして夜の救急搬送を避けるために…。
・具合が悪いのを我慢しない。
・おかしいと思ったら、日中の病院が診察を行っている時間に受診をする。
・日頃から病院と仲良くしておく。
…本当に大事です。
訪問看護師にとっても、とっても助かる事です。