ごきげんよう!きいです。
<兼近君のこと>を書きながら、私…。ある人のことを思い出していました。
それは、数年前のこと。
2回しかお会いしなかったのに、すごく記憶に残る利用者様のご家族がいらっしゃいました。
その方は、たった一人で何年も介護を続けていました。
利用者様は、その男性にとって叔母様に当たる人。
「自分を親代わりになって育ててくれた人」
利用者様のことを、そう言い表していました。
利用者様に癌が見つかり、治療が困難になり、通院もできなくなった時。
その甥っ子さんは自分でいろいろな知り合いに当たって、信頼できる往診医を探し出しました。
先生もエリアを超えて訪問診療に通ってくれ、とても親身になって診てくれていました。
「飲んでいる時にも『具合が悪いから来い』って呼びつけるんだもの(笑)」と、夜遅くに電車で往診をしたこともあったとか(先生談)。
そんな先生から「訪問看護が必要だ」と言われ、白羽の矢が当たったのがうちのステーションでした。
ギリギリになっての訪問看護導入だったので、私達は大慌てで看取りの準備を整えることになりました。
ケアに使う物品も十分ではなく、必要な物をお伝えし、その甥っ子さんが大慌てで近所のドラッグストアに買いに走るという状況。
その甥っ子様。
見た目は…一般の人とは明らかに違う風貌。
ロン毛に顎髭を生やし、ファッションは全身真っ黒だったり紫だったり。
過去は、それはそれはそれは手の付けられない不良で、利用者様である叔母様にも、心配と迷惑をかけっ放しだったのだそう。
だけど、とっても良い人…だと思えました。
とても一生懸命に叔母様を看ているのが分かったのです。
私も夜間の緊急で「熱が高くて呼吸が苦しそう」と電話を頂き訪問しました。
訪問すると訪問医もいらっしゃいました。
先生が届けて下さった解熱剤の座薬を使うことになりましたが、潤滑に使うワセリンやプロペトという類のものが無い。
「料理用の油でも、スキンケア用のクリームのようなものでも構いません」と言ったのですが「ちゃんとしたものを今すぐ買ってきます!」と言って、またまた大慌てで近所のドラッグストアに買いに走った甥っ子様。
だけど…なかなか帰って来ません。
せっかくワセリンを買いに走ってくれたのに、オリーブオイルでさっさと座薬を挿肛しちゃいました…という訳にもいかない。
さて、どうしたものか。
それにしても帰りが遅いですね…なんて先生と話していると、やっと甥っ子様が帰宅されました。
夜の街をビニール袋に入れたワセリンを持って走っていて…。
職務質問にあっていたのだそうです。
その声を掛けた巡査さんのことを「殴ってやろうかと思った」とか何とか…。
散々文句を言っていましたが(笑)
ちゃんと我慢をして、巡査さんの質問に対応し、疑いを晴らして帰っていらした甥っ子様。
偉かったですよ。
本当に一生懸命に叔母様の介護をされ、叔母様を立派に看取られました。
人は年齢でも見た目でもない。過去でもない。
本当に偉かったと思えた、素敵な方でした。