ごきげんよう!きいです。
前回の記事の流れで、医療者や在宅療養を支援する立場の者が、利用者様のご家庭に訪問する時に伴うリスクや注意すべきこと…。いろいろ考えてみたいと思います。
病院に入院されている方の場合は、医療関係者の方がホームで患者様がアウェイに身を置くことになります。しかし、在宅介護では利用者様にとって、自分の生活の場がホーム。 医療者側がアウェイに身を置くことになります。
在宅介護のアウェイは〝密室〟になってしまうことがあります。病院では考えられないリスクがあるのです。
素晴らしい方の方が多いはずなんですが…。
在宅介護は、利用者様のご自宅や入居されている施設内の自室など、〝生活の場〟で行われます。
その利用者様が男性でも女性でも、主介護者が女性の場合には私のような女性の看護師は平常心で訪問することができます。
しかし主介護者が男性で、ずっと一人で家族の介護をしているケースの場合には、退室するまで緊張感が拭いきれないことがあるのです。
自意識過剰かと思われるかもしれません。ですが、ハラスメントの危険を防ぐ必要があるからなんです。
もちろん男性がずっと一人で家族を介護してきたからと言って、必ずハラスメントがあるとは言えません。どちらかというと、素晴らしい方々の方が多いはずなんですが…。
例え少数であっても発生してしまうのは、悲しいこと。
発生の原因は〝密室〟だからなのかもしれません。
自分がストレスを感じながら先の見えない介護を続けている。
そこへ介護を支援してくれる女性が定期的にやってくる。
保険を使っているとはいえ、「お金を払ってやっている。」
自分がクレームを言えばヘルパーだって看護師だって「変えてやることができる。」
選択権は自分にある。優位なのは自分。来る人はみんな自分と家族を助けるために来るのだから。自分の言うことは何よりも優先されるべきだ…。
そんな考えを修正できる人がすぐそばにいれば良いのですが…。もしいなかったら、密室で一人、そんな考えばかりがどんどん大きくなっていく。
私が勤務するステーションでは、亡くなった翌日にこちらから足を運ぶことはありません。
その頃は、普通ならご遺族は大切な方を亡くしたばかりで悲しみの中にあり、混乱している。
人によっては身内の方への連絡や葬儀の手配などで一杯いっぱいであることが容易に想像できるからです。
病院へ搬送になった後にお亡くなりになった方が「今ようやく帰って来ました。お世話になった皆さんに顔だけでも見てもらいたい。」と連絡を頂いた時には、伺うことがあります。
しかし稀なケースです。
避けることはできたのか…?
今回の医師が利用者宅で人質にされ、撃たれて命を落とした事件。
多忙な医師とスタッフ二人が亡くなった翌日に弔問…。利用者家族が家に呼んだとしか思えないのですが、本当はどうだったのでしょうか…?
利用者家族が事件を起こした原因や目的、どうやって自宅に招き入れたかはわかりませんが、手を下そうと準備して待ち構えていたのですから危険が潜んでいたのです。
以前警察の方に「もし警察に連絡をするのであれば、それはどのタイミングで連絡すれば良いのか?」を伺ったことがあります。
答えは「恐怖を感じたら連絡して良い」とのこと。
できればそんなことにならないようにしたいものです。
もし身の危険を感じる密室へ、どうしても足を運ばないといけないときにはどうすれば良いのでしょうか?
その時には、決して一人では立ち入らないこと。できれば三人以上で。
万が一の時のために、ボイスレコーダーで会話を録音しておくこと。
他のスタッフや仲間と十分な打ち合わせの上、〇分経っても連絡が無い場合には、電話をかけて状況確認をしてもらう約束をすること。必要時には警察への連絡を依頼する。
…等、身を守る手段を講じておく必要があります。
もちろんそんなことが、そうそうあるとも思えませんが…。
私達はそういう対応をとったことが1回だけあります。
その時は時間がかかりましたが、話し合いで解約を受け入れてもらえました。
そんな経験は、もう懲り懲り。無いに越したことはありません。では、どうしたら予防できるのでしょうか?
次回、アウェイで身を守る方法へつづく…。