認知症の母への対応で心がけていること~後編~

在宅介護

認知症の母への対応で心がけていること~前編~の続きです。

「とにかくどんな言葉かけや対応でも良いから、まりぃさんを不安にさせないこと。安心してもらうこと」

「可能な限り、自分の事は自分でやってもらう。家族のためにもできることをやってもらう」

「危険は避ける。安全を守る」

 まりぃさんとの信頼を構築するため、まりぃさんにできることを安心してやってもらいたい。だけど、危険を避けるため、工夫やアフターフォローも欠かせない。

そんな日々のことについて。

まりぃさんにできること

今まりぃさんにできることは、洗濯物をたたむことです。元々几帳面な性格なので、何をやっても丁寧な人でした。洗濯物を上手にたためていた時には、それがまりぃさんの担当でした。今はパンツ類やタオルや下着はそれなりにたたむことができるのですが、シャツやブラウスなどはハンガーが付いたまま二つ折りにして放置です。

最近はハンガーを外すことも面倒くさいようです。

私は放置された洗濯物を畳みなおすことになるのですが、それをまりぃさんの隣に座って〝お母さんのお手伝い〟と称してやっています。〝まりぃさんが上手くできないから、やり直しが必要ということではないのよ〟という演出なのです。

まりぃさんが洗濯物を取り込むと、その間ベランダへ続く窓は全開になります。

〝虫さん、いらっしゃい!〟になって欲しくはありません。できる時には一緒にベランダへ出て窓を閉めるようにしますが、私が不在の時に窓全開の時間があると、後々虫退治に全力を注ぐ羽目になります。特に夏の蚊とコバエが嫌いです。

 私が一緒にベランダに出ると「あら、ありがとう」とお礼を言ってくれます。窓を開け閉めしていることには気が付いていません。

 掃除はフローリングワイパーをかけてもらいます。椅子やベッドサイドに座ったまま。でも自分の周囲1mくらいをかけると終了です。他のことが気になって、すぐに集中できなくなります。

 掃除機は私がかけます。まりぃさんが使うと、きっとバランスを崩して転倒するでしょう。私が掃除機をかけていると、まりぃさんは椅子を動かしてくれたり、両足を持ち上げて協力してくれます。

まりぃさんにさせたくないこと

 アイロンは危険です。その存在は思い出さないで欲しいので、まりぃさんにはアイロン自体も私がアイロンがけをしている場面も見せません。 アイロンがけは別室にこもってまりぃさんが眠っている時を狙ってするようにしています。デイサービスに出かけている時が、私がのびのびとアイロンがけ出来る時間です。

 料理や台所仕事は私自身が怖くて、ここだけは参戦してもらうことを避けています。ケガや事故、食中毒に直結する可能性があるからです。まりぃさんは私が気付かない間に、食べ終わった食器を運び、その食器を洗ってくれようとすることがあるのですが、これは「ありがとう」とは言えなくて…。

 足が悪くて伝い歩きのまりぃさんが、右手に重ねたお皿、左手にお箸を握りしめてヨロヨロと手放しで歩く。もしお盆を使っても両手がふさがってしまう。転んでしまう危険が高くなる瞬間です。お箸を持ったまま歩くことは特に怖いのです。転んだ時に、下手をすると刺さりますから。

 食器洗いも食器用洗剤とスポンジを使うということを忘れてしまっているので、流水と手洗いで食器を洗ってしまいます。汚れが満足に落ちるまで、水は流しっぱなしになります。まりぃさんが洗った食器は、全部私が後で洗いなおすことになります。

 コンロを使えないように、ガスの元栓を締めることも忘れてはいけません。

 冷蔵庫の扉を全開にして、ボーっと中を眺めているまりぃさんを見ると悲しくなります。

安全を守るって大変!

 火と水と電気の扱いには気を使います。お金と危険が関係してくるからです。いっそまりぃさんが台所に入れないように、ベビーゲートなどを取り付けようかと考えたことがありました。だけど、それはしませんでした。家族が動きにくくなることと、どうしても〝抑制〟のイメージがぬぐえなかったからです。

 赤ちゃんを台所に入れないのと、まりぃさんを台所に入れないようにすることを同じようには考えたくありませんでした。〝抑制〟をせず、まりぃさんの安全を守りながら被害を最小にするため、ギリギリのところでいろいろなバランスをとっています。

 不安にさせず、自分の事は自分でやってもらい、安全を守るって、本当に大変!!

 そんなふうに一緒に過ごす時間の中で、家の中であっても様々な危険があることに気が付きました。

 初めはまりぃさんと一緒に暮らすのではなく、通勤途中に立ち寄り見守る事を考えていたのですが、この〝危険〟に気が付いてしまった。

 それがまりぃさんとの同居に踏み切ったきっかけでした。

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