ごきげんよう。きいです。
これは私自身が体験した話。
「尿漏れするから、救急車を要請した」という男性の話です。
Oさんは高齢の男性。前立腺の疾患で、バルンカテーテルという尿管が膀胱に留置されていました。そして訪問診療医が定期的に訪問し、バルンカテーテルを4週間に1回の頻度で交換していました。
尿路感染による発熱を繰り返した経緯と、内服薬に依存的で不安とこだわりが強いことがあり、困った医師の依頼で訪問看護が導入となりました。
看護師は尿破棄の方法を指導し、バルンカテーテルのトラブルの有無の確認、内服状況を確認し、体調観察を継続していました。
バルンカテーテルの留置が長くなると、多くなるのが〝尿漏れ問題〟です。
ご本人にとっては悩ましい問題ですが、医療関係者としては〝珍しくない〟問題。
カテーテル自体が詰まっておらず、少量の尿漏れであれば、清潔を保ちながら尿とりパッドを使って次の交換まで様子を見るのが一般的です。
前立腺の疾患のある男性のバルンカテーテル交換は、看護師は「尿道を傷つけ出血するリスクが高い」として避けたいものです。
私が勤務するステーションは「医師に依頼する」としています。
それがある日、Oさんは尿漏れが気になって仕方がなくなってしまいました。度々電話がかかって来ては「尿漏れがあるのは管が悪い。新品に変えてくれ」とおっしゃるのです。
Oさんが訪問診療医へ直接電話をかけ、医師から「状況を確認して欲しい」と看護師へ電話が入る事もありました。
カテーテルに問題があって詰まっている、破損して尿が漏れている等であれば、正当な理由なので、保険の利く範囲で医師が交換します。
ですがOさん。あまりに連絡が頻回で1~2週間たたずに交換して欲しいと言います。最初は医師もカテーテルのサイズをアップする対応をしましたが、少しでも漏れるとオニ電になって来ました。
カテーテルの破損もつまりもありません。
看護師が訪問して、何とか交換せずに済むようにあれこれ考え、異常がないので様子をみましょうと説得もするのですが、「この管はダメだ」の繰り返し。
「様子を見て下さい」
「交換はできません」
「訪問も物品も自費になりますよ」
と相談した先生もウンと言えない状況があり…。
いよいよOさん。「先生が交換してくれないなら、病院で交換してもらう!」と夜の22時過ぎに救急車を要請。
救急隊が到着し、一応バルン交換をしてくれる病院をあたってはくれたそうなのですが、病院も「受け入れ拒否」。
そりゃあ、そうですよ。
尿はちゃんと流れているし、訪問診療医がいるのにねえ…。
その結果、救急隊と訪問診療医が電話で話し、事情を知った救急隊は撤退したのでした。
私達訪問看護師は、それを翌日にケアマネさんからの連絡で知りました。
その時は本当にビックリしましたよ。
その後、担当者会議が開かれ対策を検討。
医師がOさんの「バルン交換問題」に電話対応や緊急訪問する頻度が減るように、「男性でもバルン交換を引き受けます」という訪問看護ステーションに移行することになりました。
その後もしばらくは下剤の飲み方の問い合わせがあり「Oさん、連絡先が間違っていますよ~」ということがありましたが…。
尿漏れの相談はありません(笑)。
今回は「自分の要求が医師に通らないから救急車を要請する」というケースでした。