初めての捜索願い~後編~

母の介護

ごきげんよう!きいです。

ある朝、目が覚めたらまりぃさんの寝床がもぬけの殻に!一人で出かけたまりぃさんを完全に見失ってしまい、警察へ連絡しようと決心した私。電話でのやりとりはどんな風だったのか?まりぃさんは、どこにいたのか?そんな話です。

ちょっと勇気が要った電話

 私が電話をかけたのは、管轄の警察署の「生活安全課」でした。

 今まで別件で、何度か警察の方とのやりとりをした経験があったので、そのためかなんとなく「110番」がしにくかったのです。

 でも、間違いではなかったようです。そのまま話を聞いてもらうことができました。

「認知症の母が一人で家を出てしまい、近所を探したのですが見つからないのです。」と伝えました。

そんな相談は少なくないのでしょうか。

「ではお母さんのお名前から教えてください」とすごく普通に会話が続いて行きました。

電話を受けて下さった担当者に聞かれたことは…。

 まりぃさんの名前・年齢・住所・連絡先・いなくなった経緯(どこから、何時くらいにいなくなったのか?)・身に付けていると思われる服装・身体的特徴・行きそうな場所・金銭を所持しているか否か?今までにも一人で出かけてしまったことがあったのか?会話やコミュニケーションに問題があるか否か?ということを聞かれました。

 いなくなった経緯はそのまんま、私が二度寝をしてしまい、目を覚ましたらいなくなっていたと伝えました。その時間もすべて。

 身に付けていると思われる服装は、まりぃさんが手元に置いてあった衣類の中から無くなっていたものを伝えました。

 身体的特徴が、一番説明に時間がかかりました。身長は140㎝位。中肉中背~少しふっくらした体格、白髪を後ろで結んだ髪型。顔は面長。眼鏡はかけていない。そして、まりぃさんの一番の特徴である、変形性膝関節症。O形に曲がった両足。普段は外出時には杖をついている事。今はその杖が家に残っているので、あまり遠くまで歩けないだろうと予測できること。

 行きそうな場所を伝え、自宅内を含め15分程探したが見つけられなかったことも伝えました。

 お金は所持しておらず、今までにも一人で外へ出かけることはあったが自宅そばを歩いていたこと、会話によるコミュニケーションは可能だが、少し耳が遠い事…。

思い当たることをすべて、まさに洗いざらい話したような気がします。

その後「わかりました。最寄りの関係各所へ連絡しますから、あなたはそのまま自宅で待機していて下さい。」と言われ、電話は終了しました。

「なぜ目を離したのか?」と問われるようなことはありませんでした。

発見されたまりぃさん。

 その後、自宅で放心状態の様だった私…。不安は残るものの、電話が終わったことで少しだけホッとしたような気がしました。

5分程経ったでしょうか?急に電話が鳴り、私は飛び上がりました。

その電話は、先ほど話をした担当の方からでした。

「まりぃさんと名乗る女性が発見されたと連絡が入りまして…。」

はやっ!!

驚きの早さでした。

「母はどこにいたんですか?」という私の問いに、驚くべき答えが返って来ました。

隣のマンションのエントランスで座っていらしたようです。住人の方から通報がありました。」

はぁ…。

「何だ…。そんな所にいたんだ…。」とも思いましたし、「そんなに近くにいても、建物の中に入ってしまうと、本当に見失ってしまうんだ。」という怖さも感じました。

私の中ではガス会社の周囲を歩いていたまりぃさんの姿がとても印象強く残っていて、一人歩き(徘徊)って、歩道を延々と歩くようなイメージを抱いていました。

だけど、建物の中に入り込んだり、上のフロアに上がったり、地下に潜ったり。

人の動きって、予測できないものだなと思いました。

そういえば、5階建てのデパートで迷子になる時って、同じ建物の中にいるのに、フロアが違えば目も届かないし、声も聞こえなくなりますよね。

ああ、やっぱりそういう見失い方もするんだ…と勉強になりました。

まりぃさんの帰宅

 「私はどうすればいいですか?母を迎えに行けば良いですか?」と聞いたところ、「あなたはそのまま自宅にいて下さい。お母さんをそちらにお連れします。」と…。

 玄関前の共有通路から下を覗き込むと、二人の巡査さんに連れ添われて歩いてくるまりぃさんの姿がみえました。何やら「私は昔から、方向音痴で…」のようなことを話していました。

まりぃさんが部屋のあるフロアへエレベーターで上がってきた時も、通路を歩きながら「私は昔から、方向音痴で…」と同じ話を繰り返し話していました。

二人の巡査さんは「お怪我が無くて何よりでした」と優しかったのを憶えています。

私はホッとするやら情けないやらで、涙が溢れてしまったのでした。

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