ごきげんよう。きいです。
子供だった私にとって、父親が医療機器に囲まれたベッドで寝ている姿は、不安でしかありませんでした。
ICUに入って父の傍で面会できるのは、大人であるまりぃさんだけだったように思います。
「お父さん、死ぬかもしれない」と聞かされたのも衝撃でした。
だけど…。
父は死にませんでした。
治療のかいあって、見事回復し、退院できました。
ですがその後、父は仕事を休み休みにしかできず、その分まりぃさんが夜遅くまで働きました。そのため、家は経済的にゆたかではなく、家の中は空気がへんでした。
父はC型肝炎に感染した後も、劇症肝炎で生死を彷徨った後にもずっと、肝機能をチェックし続けた検査結果を捨てずに保存していました。
それは段ボール箱に雑に仕舞われていて、時々治療費の領収書が紛れていたりもしました。
この頃の山のような検査データと、そこに混じった書類を、後に私とえい君はしらみつぶしに確認する羽目になるのです。
胃を全摘した手術の時に使用したのが輸血だけだったのか。それとも血液製剤も同時に使ったのか。
それが何らかの形で記されているもの。
治療経過の報告書でも、診療明細書でも何でも良かったんです。
紙、1枚だけでもいいんです。
それが欲しいのに、出てこない。
私達兄妹が社会人となった時、一度引越しもしています。
その時にゴミとして捨てられてしまった可能性もありました。
何十年も経過して、施設でお世話になり、すっかり年老いた父。その古い荷物を発掘し、探しても探しても出てくるのは全く関係ない父の血液の成分を記したものばかり。それが残っているだけでもすごいことなのか、逆に迷惑なのか…。
何も残っていなければ、あきらめもつくけれど。
残っているから期待をしてしまう。
本当に必要な物は、見つけることができませんでした。