認知症になって前進できた話

介護の現実

 ごきげんよう!きいです。

 今回は「認知症を発症したために、一歩前進できた」という利用者様のお話しです。

 この利用者様、Mさんは若くしてご主人を亡くしています。

 二人のお子さんを立派に成人させた頑張り屋さん。

 お子さんがそれぞれに家庭を持った後は、一人暮らしをされていました。

 仕事を退職された後は、地域の活動に積極的に参加したり、人と話すのが好きだからと自らデイサービスも利用されていました。

 ところが。

 デイサービスを利用中に体調不良となり、一人だけ帰宅。

 その後暫くの間お休みが続いた間に、新型コロナが流行しデイサービスが休止。

 Mさんが「また通えそう」と思ったときには、デイサービスが事業縮小のため閉鎖となってしまっていました。

 仲が良かった友人と会えなくなってしまったことや、体調不良となった際にデイのスタッフさんに迷惑をかけてしまったという思いが残ってしまったと、Mさんはふさぎ込んでしまいました。

 一人で自宅にひきこもり、体調は不安定。買い物や散歩に出かけたかと思えば、転倒してケガをします。

 担当のケアマネさんが、別のデイサービスを探して見学をお勧めしても、すべて却下。

 訪問看護の利用も、最初はなかなか首を縦に振らなかったそうです。

 それでも週1回の訪問看護は開始することができ…。体調確認と屋外での歩行訓練や、傾聴しながら室内でのリラクゼーションやストレッチ。内服支援を続けてきました。

 そして…いよいよ、認知症の発症です。

 「あれれ?」と思う事が増えてきたこと。

 物忘れが増えて、Mさんから不安がる言動が見られること。

 身だしなみが整えられなくなってきたことなどを、娘様やケアマネさんと共有していました。

 「どうやって認知症専門医の診察を受けるか」を娘様へアドバイスしたり、内服したことを忘れてしまい重複し始めたときには、訪問薬局さんと内服マシンが導入になったり。

 これは「アルツハイマー型認知症」の診断を受ける前から、ケアマネジャーや訪問看護が入っていたからこそ対応が早かったのかな…と思います。

 そしていよいよ、デイサ-ビスの利用再開ができる事になりました。

 あれだけ何度お勧めしても、あの手この手でオススメしても、全部却下していたMさんが!

 やっと、「うん」と言って下さいました!

 その理由は…。認知症を発症したからだと思うんです。

 それだけ、一人でいることが不安で、物忘れをして混乱する自分が不安だったのでしょうか?

 「誰かと一緒にいたい。その方が安心」という思いになったのでしょうか。

 それとも、「デイサービスを嫌がっていた」という事を忘れかけているのでしょうか。

 そのどちらもが、認知症が進んだことを表していると感じます。

 だけどそれが、Mさんをデイサービスへ向かわせることになり、また良い結果に繋がることもあるはずです。

 二人のお子さんは、デイサービスの日には安心して過ごすことができると思いますし、介護負担の軽減にもなると思います。

 Mさん自身にも、定期的に外出する機会ができ、人との交流の場ができます。

 食事や入浴、季節のイベントなども提供されます。

 デイの送り出しのために、いらないと言い続けていたヘルパーさんの受け入れもあり、Mさんを見守る人が増えることにもなりました。

 いずれもっとヘルパーによる支援が必要になった時にも、そのプラン変更はスムーズなはずです。

 今回のMさん、「嫌がっていた支援を受け入れてくれるようになった」の切っ掛けが、「認知症の発症」というケースです。

 認知症になった事は悲しいけれど。

 これからもみんなで支えていきます。

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