まりぃさんとの外出。そしてあきらめたこと。

介護の現実

 ごきげんよう!きいです。

 私はまりぃさんと同居を始めてしばらくは、まりぃさんの「記憶に残らなくても、感情に残る」ことを信じて、映画に連れて行ったり、ショッピングやイベント、お花見などに連れ出したものでした。

だけど今では殆ど外出はしていません。その理由や、これからどうしていくのが良いのか?ということについてです。

まりぃさんとの外出

 まりぃさんはTVを見るのが大好きです。ドラマや映画、映画はホラーだって平気で見ています。

ニュースで「桜の花が満開です」と桜の名所の画像が流れると「すごいわねぇ。行きたいわ。」

秋に紅葉の美しい神社仏閣の映像が流れると「見事ね…。行ってみたいわ。」とお出かけしたいと言葉にします。

 元々のまりぃさんはあまりアウトドア派ではありません。定年退職後、何を思ったのか、お友達に誘われて富士登山に挑戦。高山病のためドクターストップがかかり、泣く泣く下山したという経験があります。

 あまりアクティブなことは向いていないのだと思います。だけど、まりぃさんはちぐはぐな枕木の、特に昔の破片を集めがち。現在の身体と、元気で「自称、暴れん坊」だったころの身体とはわけが違います。

 同居した当時の私は、まりぃさんに楽しい経験をいっぱいしてもらって、喜んでもらいたかった。

まりぃさんが行きたいと思ったところや喜びそうなイベントに連れて行ったりしたものです。

 だけど、映画もイベントも花見も、みんな結果は「疲れて終わり。」

 映画館での映画鑑賞は、2時間近く席に座って静かにしていないといけません。おしゃべりも周囲の皆さんのご迷惑になります。途中でトイレに行きたくなることも考え、席も通路脇を確保。もちろん事前にトイレは済まして。それもお手伝いをしないといけないので、混む時間は迷惑になってしまうと思い、ピークを避けて。

 そんなふうにいろいろ考え、頑張ってみたものの、まりぃさんときたら〝映画の途中からいびきをかいて寝始める〟という結果に。

何の映画を見に行くかの段階から、まりぃさんが好きそうなミュージカル仕立ての映画を選んだのに。

 イベントは、ショッピングモールで時々開催される健康増進の啓発イベントや地元出身のミュージシャンのミニコンサートなどにも行きました。

 まりぃさんは…途中で飽きて遠い目で明後日を見ていました。

 お花見は…初めは「わぁ。もう桜が咲いているのね」と笑顔でしたが、数分間で見慣れてしまったようです。桜の見事な遊歩道の途中で「寒い」と言い出し、Uターンすることに。

 買い物は「好きなものを買っていいんだよ」と言っても、何も選びません。

ただ私の隣を歩くだけ。これは新しい人気の商品なんだよ…と言っても「ふうん。」

そのうち車で出かけても、降りることすらせず「待ってる。」

車にまりぃさん一人を残して離れることが怖くなりました。

そして帰宅したまりぃさんは、数時間後には出かけたこと自体を忘れてしまっているのです。

喜びは一瞬

 私だけが張りきって、まりぃさんを連れまわしたのではないのです。

だけど、まりぃさんを喜ばせたいという気持ちは〝自己満足〟だったのか…。

 まりぃさんは集中力が続かなくて、飽きてしまう。

喜びは一瞬。苦労はたっぷり。

水分やリハビリパンツ、尿とりパッドなどの変えも用意し、万が一のズボンの替えも用意して。無理はしないようにと割り切って。車で移動し、車椅子と杖を持って。

食事もまりぃさんが好きそうなメニューがあるお店をリサーチして。

いつでもどこでも周囲に気を遣って。

 それでも喜びは一瞬。

 しばらくして、私はまりぃさんに喜んでもらうための外出を止めました。

 今はTVに映る桜の名所や紅葉の山々、満点の星空を観るまりぃさんを見守っています。

映画はやはり途中で飽きてしまうので、1時間もののドラマがちょうどいいみたい。ラブシーンだって、クールに見ています。ホラーや事件ものだって平気!

 食事も時にはファストフードのハンバーガーだっていいじゃないですか。チキンにだってかじりつく元気があります。

食べ方がきれいじゃなくったって、こぼしたって、行きたいタイミングでトイレに行ったり、時にはおならが出ちゃったりしても、家なら平気!

私は、まりぃさんに〝私が思う素敵な経験に参加してもらう事〟をあきらめました。

その代わり、身の丈に合った日常の中で楽しみを見つけています。

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