ごきげんよう!きいです。
前々回、<悲しい事件>を書いていて、あることを思い出しました。
それは何人かの患者様のご家族から聞いた「家族を人質に取られている」という言葉でした。
複数の方からその言葉を聞いたのです。だけどその犯人(?)は共通していました。
その言葉の意味は?いったい誰に?何に?「家族を人質に取られている」というのでしょうか?
犯人は「お世話になる人」
その言葉は、一人だけが言っているのではないのです。
時期も違う、場所も違う、言っている人も違う。それなのに犯人(?)は一緒。
〝病院で勤務する医療職〟です。
初めて聞いたときは、驚きました。
難病のために寝たきりの母親を介護する一人息子さん。定期受診の時にはお母様を車椅子へ移乗し病院へ通っていました。もちろんその日は仕事(自宅で開業)を休んで。
ある受診日「次回、自宅で採取した検体を持参してください」と指示があったものの、外来のどなたかは存じませんが、検査の容器を渡し忘れてしまったようで…。
検体容器が無いと気付いて、外来に連絡をした息子様。
外来の電話を受けた医療職は「取りに来てください」と言ったそうで…。
それに対して息子様は激怒。
「自分は一人で難病の母を介護しているのに。病院に検体容器1個を取りに行くために、母を見守るヘルパーを手配し、仕事を休んでガソリン代をかけて、時間を割いて行かないといけないのに。簡単に取りに来いと言うなんて。こちらが検体容器1個のために、どれだけの代償を払わないといけないのかが分かっていない!渡し忘れたことに対する謝罪もない。『送ってくれませんか』と聞いたら、『それはできません』という返事が返ってきた。難病の患者を診ているのに、難病の患者を看るのがどれだけ大変な事かがまるで分っていない!」というのが息子様の言い分。
そして、その最後に付け加えられたのが「こちらは家族を人質に取られているんだ。病院も変えられるならいくらでも変えるけれど、それができないから耐えるしかないんだ。病院の言うことには従うしかないんだ。」という言葉でした。
また、別の方は…。
退院日の翌日に訪問看護が利用開始となった女性。ごあいさつの後「お家で一晩過ごされていかがでしたか?」と質問したところ…。本人が口を開く前に、傍にいた娘様が「まあ、あの病院はひどいものでしたよ。」という言葉を皮切りに、病棟看護師のあんな話、こんな話が出るわ出るわ…。本人のお気持ちや体調確認、訪問看護とはどのようなものかという説明や契約の前に。
よっぽど誰かに聞いて欲しかったのでしょう。
その方も「家族を人質に取られているんだから、家族は何も言えないですよ!退院できて清々しています!」とおっしゃっていました。
またまた別の方は…。
お母様が入院した当日、病室で荷物を整理していた娘様。そこへ一人の看護助手さんがやってきて、ゴミ箱を指さし「ゴミはそこに捨てて下さいね。お菓子の持ち込みは禁止です。隠れて食べてもすぐに分かりますからね!」と言ったのだそうで…。
手術目的の入院だったので「何か言って、入院中の母が酷い目に遭ってしまったらと思うと何も言えなかった。家族を人質に取られているようだった。だけどあまりに悔しかったので、退院する時にご意見箱に名指しでそのことを投書してきました。」
我慢するしかないの…?
これらの患者様ご家族の言葉は、私の記憶を頼りにできるだけ忠実に再現したつもりです。ここには書けない様な言葉も実際はありましたが、それはさすがに控えさせていただきました。
だけど、耳が痛い…胸が痛い…そんなエピソード。
本当に?と思わなくも無かったのですが、嘘をついても何のメリットがあるわけでもない。
ただみんな腹を立てて、そして悔しがっていた。
そんな強い思いに、私は同調はできず、ただ傾聴するしかなく…。
これが言葉の受け取り方の間違いや患者様側の何かの思い違いであっても、それも悲しいこと。
「家族を人質に取られている」という言葉が表しているのは、患者様とそのご家族の抱く「世話になる・身を任せるしか選択肢がないのだから、何かあっても我慢するしか仕方がない」という思いなのでしょう。
お世話になる人、なっている人には何かされても我慢する?
介護士に物を盗まれても、病院の職員にひどいことを言われ、不当な扱いを受けても我慢するしかない…?
本当に?
本当はそうじゃないはず。
何がそうさせるんだろう。なぜそうなるんだろう?
逆に耳に入ってくる患者様から医療職に対する、セクハラ、パワハラ問題。モンスターペイシェントと呼ばれる人たちの存在…。
それは何だろう…。
人間って難しいなぁ…。