前回お伝えした、親と同居を考える時・始める時に考えることになる「親を扶養に入れるかどうか?」という問題。それを検討する時のヒントとして、「そのデメリット」について考えてみました。
なぜデメリットなのか?それは介護費用の負担が大きくなってしまうためです。
今回は、親を扶養に入れないケース「世帯を別にする=世帯分離」についてお伝えします。
世帯を分ける
介護保険制度では、世帯の所得に応じて介護費用の自己負担額が決まります。
親と子世代が同一の世帯(親を扶養に入れているケース)になっていると、現役で働いている子世代の所得によって世帯の合計所得金が高くなり、自己負担の割合が高くなります。
また、介護費用の自己負担額の上限も世帯の所得によって変化するため、世帯分離によって自己負担割合の両方を下げられるケースがあります。
介護費用は1割・2割・3割という単位で反映されるため、10万円分のサービスを利用した時に3割負担では3万円を負担。それを1割負担にできれば、1万円で出費を抑えられるのですから大きな違いです。これが毎月必要な固定費用のこととなると、ますます切実です。
とはいえ、世帯分離にもデメリットはあります。
介護保険にかかる費用は抑えられることになりますが、扶養控除は受けられませんし、会社からの扶養手当も受け取ることができなくなります。
またお金以外の面では、役所での手続きが煩雑になります。
同じ敷地内に同居はしていても、親の世帯と子の世帯はそれぞれ独立したものになるため、手続きはそれぞれ別に行わないといけません。
住民票や戸籍謄本の写し等を役所へ受けとりに行く場合、同一世帯ならば問題なく親の住民票を受けとれますが、世帯分離をすると「委任状」が必要となります。
現在では、マイナンバーカードがあればコンビニなどで文書を取り寄せることができますので、上手く利用して煩雑さをカバーするのも良いでしょう。
世帯分離をするためには
現在同居し扶養している親世帯を、実際に世帯分離するためには、役所に届け出をする必要があります。
世帯分離の届け出(世帯分離届)を提出する時は、その理由を「生計を分けるため」としないと受理されない場合があります。
「介護に関わるお金を抑えたいため」と説明してしまうと、本来の目的と違ってしまうためです。
注意が必要です。
では、これから親を引き取る、もしくは実家での同居をスタートさせるという方は、どうすれば良いのでしょうか。
これは単純に「自分の世帯だけの住民票を移す」「親の住民票を移す」。それで良いのです。
同居に伴う移動が、異なる市区町村へなのか。それとも同じ市区町村内での移動なのか。
それによって届け出が変わりますが、それぞれのケースにより「転出届と転入届を出す」もしくは「転居届を出す」。それで大丈夫です。
もし転居をきっかけに、世帯を一緒にしたいケース(元気な親を扶養に入れたい場合など)では、役所で世帯合併届を提出します。
いろいろなケースにより、受け取る金額と払うべき金額も異なるし、提出する書類も異なります。
それでも「親と同居をする時。世帯を一緒にすること、分けることでそれぞれのメリット・デメリットがある。それはお金に関わる事である」ということを頭の片隅に置いておいてください。